まず、日本の侍が持つ特権の一つである「切り捨て御免」について説明します。この言葉を耳にしたことがある人も多いでしょうが、その実態は誤解されている部分が多いです。「切り捨て御免」とは、武士が侮辱を受けた場合に、町民や農民を斬り捨てても罪に問われないという特権のことを指します。しかし、その権利を行使するには非常に厳しい条件が課されていました。
まず、侍が侮辱を受けた場合、即座に刀を抜くことは許されていません。相手に対して侮辱の訂正を求め、それが拒否された場合のみ刀を抜くことが許されるのです。しかし、それでも「とどめを刺すこと」は厳禁。さらに、目撃者がいなければその行為が正当であることを証明することはできず、逆に自らが処罰される可能性もありました。これほどまでに厳しい制約があるにもかかわらず、「名誉」を重んじた侍たちは時にこの権利を行使することがありました。
さて、現代においても侍は「サムライジャパン」のように象徴的な存在として称賛されています。特にスポーツの世界で、日本の代表チームが「侍」と呼ばれることは広く知られています。
なぜこの「侍」という名が使われるのか?それには実際の侍が持つ精神性が関係しています。
「サムライジャパン」という名は、2006年にWBC(ワールド・ベースボール・クラシック)の日本代表チームの公式名として使用されるようになりました。当初、電通がこの名称を考案しましたが、商標の問題で「サムライジャパン」という表記に落ち着きました。この名前には、日本の侍が持つ「強さ」「忠誠心」「規律」が反映されており、スポーツを通じてその精神が世界に広まっているのです。
侍と一口に言っても、実際の生活は一様ではありませんでした。上級武士と下級武士に分けられ、それぞれの生活は大きく異なっていました。
上級武士は、学問や武術の鍛錬に励みながらも、比較的余裕のある生活を送っていました。食事も豪華で、刺身や焼き物、煮物など、贅沢な料理を楽しむことができました。しかし、一方で下級武士は生活が厳しく、日々の生計を立てるために副業をしなければならないことも多かったのです。彼らの食事は質素で、ご飯と味噌汁、漬物など、シンプルなものが主でした。
興味深いのは、侍たちの食事に関する禁忌です。例えば、フグは毒があるため、侍たちは命を懸ける武士としてこれを食べることは「不名誉」とされました。また、マグロも「シビ」と呼ばれ、これは「死体」を連想させるため縁起が悪いとされていました。
世界的に見ても、侍は非常に恐れられていました。特にその武器である「刀」は、他国の兵士たちにとっても驚異的な存在でした。フランスの1860年の事件では、侍がピストルを持つフランス兵の腕を斬り落とすという事件が発生し、その剛勇さが話題になりました。
また、海外では「侍と中世の騎士が戦ったらどちらが勝つか」という議論が巻き起こったこともあります。中世の騎士派は、侍の刀が軽いため、重いロングソードには勝てないと主張しましたが、一方で侍派は、刀の切れ味と侍の精神力が騎士を圧倒すると反論しています。この議論は未だに決着がついていませんが、侍の強さは「精神力」にも大きく依存していたことがわかります。
侍の精神力を象徴する行為として「切腹」があります。この行為は、室町時代から始まり、武士が名誉を守るために自らの命を絶つ方法として用いられました。
特に不名誉な行いをした際には、切腹が義務付けられることもありました。
1868年の「堺事件」では、フランス兵に対する不始末の責任を取るため、土佐藩士たちが切腹を命じられました。この時、彼らは内臓をつかんで投げつけるなど、壮絶な最期を遂げたのです。この様子を見たフランス兵たちは青ざめ、最終的には切腹が中止されるという結末を迎えました。このような話からも、侍の精神力がいかに強いものであったかがわかります。